オメガバース 絶対αとΩ

オメガバースの小説を書いてみたくて

5人の絶対αと一人(俺!)のΩ αの視点

渋谷ののスクランブル交差点。
数百人、時には数千人が行き交う中、一際人目を引く5人が周りをざわつかせている。
真っ白なブレザーに、黒いパンツ。
ブレザーの胸元には、交差する⚔️と蘭の華。
全てに秀でたαだけが通う名門校、白蘭高等学校の制服だ。
信号待ちする女子高校生が、5人を見て歓喜の声を上げる。
「やだー!」
「絶対αが揃ってる♥️」
「目の保養過ぎでしょう!」
「一人だけでも見れたらラッキーなのに、5人全員ってマジでヤバイ」
女の子達の視線を釘付けにするのは、絶対αと言われる5人。

「天音将門よ!本物見れるなんて、死んでもいい」
そう、言われたのは5人の中では小柄な美少年。
尤も、他の四人が185㎝前後なので小さく見えるだけなのだが。
天音将門は、大河ドラマ常連の大物俳優と日本で最も美しい女優を両親に持つ2世タレントだ。
母親譲りの女の子と言っても通る美貌に、父親譲りの才能でドラマや映画に引っ張りだこの役者だ。最近は、音楽活動にも才能を開花させ、日本だけでなくアジア全体に熱狂的なファンを持つ。
見られることに慣れている彼は、女の子達の黄色い歓声や不躾な視線も意に介さず、ニコニコしながら手を降ったりしている。
その笑顔は、抱かれたい、抱きたい、癒されるとどんなアンケートでも、No.1を獲得する程の人気があるが、将門の心の裏側では…。
子供の頃から芸能界に生き、上部だけの自分にすり寄ってくる、ヒートを使い自分を垂らしこ込もうと策略を巡らせるΩに嫌気がさし、αとしてΩと番になることが幸せなのかと、冷めた気持ちでいる。

天音将門の隣に立つのは、金髪、碧眼のアラン.ルイ=神崎。
父親は世界的なホテルグループのオーナーで、母親が日本人。
女の子達からは、
「アラン様、神々しい美しい」
「白馬の王子さまにしか見えない」
と言われ、男性からも
「抱かれたいかも♥️」
など、男女問わずに、その色香に惑わされる人が後を絶たない。
天音将門と違い、愛想を見せず淡々と立つ姿が却って、ギリシャの太陽の神アポロンの様な美貌に似合い、周りの感嘆を誘う。
アラン自身は、騒がれる事に苛立ちを感じているが、それを悟られる様な隙は見せない。
いつも、感情を表には出さず、静かな湖面の様に微笑をたたえている。
優しそうな笑顔に誰もが魅了されるが、心の内側には簡単には入ることが出来ない男だ。
周りがいくら、持て囃しても、運命のΩと出会うなんて、夢のまた夢。
トップに立つ人間として、Ωとの番う事だけは、生まれたときから、決まっている。
ならば、心の内側に誰かを住まわせる必要はない。

アランとは対照的なのは、夜の闇を思わせる漆黒の髪に、鋭い目差、迂闊には近寄れない雰囲気を持つ
高梨静香。
可愛らしい名前に反して、関東を束ねるヤクザ高梨組の後継者だ。
中学生までは、ケンカ上等!売られたら、倍返しの勢いで、暴れていたが、最近は高校生ながら、組の後継者として父親の3代目組長を補佐し、下の人間や組の傘下にある舎弟企業を統率するようになり、カリスマ性に磨きがかかり、女の子からは、
「静香御前、今日も冷たそう♥️」
「一度で良いから、抱かれてみたい!」
と、熱い吐息を吐かせているが、静香本人はニコリともしない。
女には、全く困らない。
β、Ω、α関係なく手を出すが、抱きたいときに側に居るなら誰でも構わない。
セックスに対して貪欲でいるが、相手には全く執着がない。
αである自分は、組のため、参加の人間のため、Ωと番になる事だけを求められてる。
運命のΩなんて都市伝説は、信じていない。
求めるだけ無駄なら、誰も望まないと決めている。

高梨静香の側には、濃いめの茶色い髪に、鳶色の瞳、穏やかで気品のある佇まいの男、佐賀美涼丞が立っている。
一見、穏やかで大人しい優男に見えるが、187㎝を越える長身に、鍛えられた胸板の細身の姿は、パリコレに出るモデルにも負けないほど、均整がとれている。
αが通う名門、白蘭大学の創始者であり、日本のα教育の父と謳われる、佐賀美典膳の血筋で、幼稚園から大学まで有する白蘭大学付属全ての実権を握る佐賀美家の跡取りだ。
教育者の家柄の跡取りだけに、誰に対しても公正で、思いやりがあり、αが通う学内の中でも、図抜けた知性と判断力を持つ、生まれながらに人の上に立つオーラを放ち、男女を問わずに、抱かれてみたい男として、白蘭の学内、近隣の学校の生徒の憧れの対象だ。
「お嫁さんになりたい♥️」
「見つめられたい♥️」
と、中学を卒業する頃から、番たい男として、縁談は引きも切らない。
佐賀美涼丞は、親や親族から強制される、ただαと番になりたい、条件のよいαだけを求めるΩと一生を共にするのかと、心をうんでいるだが。

そんな友人たちの中で、一人だけ運命のΩとの出会いを信じて疑わない男がいる。
188㎝の高身長、無駄肉は一切ない引き締まった体、さらさらと流れるような煌めく黒髪に、意志の強そうな眉、男らしい容姿だが、たれ目ぎみの目元には愛嬌があり、人懐こい表情で大きな口元を綻ばせて笑う男。
我が儘で一筋縄ではいかない、絶対αの中で、友人たちを纏めて、群のリーダーとして信頼と統率力を発揮する、それが山王寺タケルだ。
彼は、江戸時代から続く巨大企業グールプ山王寺財閥の次の当主であり、今の当主の代行として、山王寺のグールプ企業数社を経営する若き財界人でもある。
江戸のころ、大阪の鴻池、江戸の山王寺と言われる程の財力と勢力を誇り、その発言は幕府をも無視できないと言われていた。
現在は金融、不動産、総合商社、ネットビジネスなと山王寺の名前を持つ企業も多彩だ。
αはΩと番になる。
それがαの幸せであり、αと言う優秀な遺伝子を残す最良の道と言われている。
αの家系では、Ωとの結婚を優先するあまり、気持ちや愛情など、個人の感情は無視され、番、結婚をする者も少なくない。
だが、α随一の名家である山王寺にはそれがない。
山王寺の人間は、出会ったΩ、番となったΩこそ運命の相手と素直に信じてしまう。
もちろん、質の悪いΩに出会わぬ様に、代々忠誠を誓い仕えてくれる人間の並々ならぬ努力の結果だけど。
それでも、タケルの両親、姉夫婦は、互いに愛し愛され、運命の相手と幸せな結婚を、番となったと言い切る。だから、運命のΩは必ずいると。
時かくれば、自然と出会う。
出会えば、目と目で分かりあい、一瞬で気がつく。
冷めた友人にも、度々繰り返す。
友人たちは、タケルが無邪気に話す側で、羨ましいと思いつつ、出会いを果たせず、苦悩する日が来るのを心配していた。

Xmasも近いこの日、普段はそれぞれ忙しく揃って出掛ける事もない5人が、時間があるなら食事をしようと言い出したタケルの発言で出掛けることになった。
将門が、たまには5人で街を歩きたい。
Xmasの装飾に彩られた街を歩きたいといい、白蘭から会場のホテル(アランが経営を任されてる)まで歩くことになった。
渋谷の交差点で信号待ちをし、周りの女の子たちを歓喜の渦に巻き込んだ彼らが、後数歩で運命と出会う。
信号が変り、スクランブル交差点を歩き出した彼らに甘く芳しい匂いが漂ってくる。少しずつ、匂いが濃くなる。
最初はいい匂いがする程度だったが、匂いが濃くなるのにあわせ、心臓が高鳴り、耳の奥でどくどくと脈が打ち出す。
匂いに体が反応して、体温が高まり、息も苦しい。
5人は直感で状況を理解した。αは、運命のΩが近くにいることを体で感じる。
将門は、「Ωだ。運命のΩが近くにいる」
アランは、「まさか運命のΩと出会ったのか?」
静香は、「有り得ない、運命など」
涼丞は、「感じるΩだ。これは、運命のΩだ」
タケルは、「愛しい匂い、香りだけで奪われる」
運命のΩを信じていた者、疑っていた者、諦めていた者、Ωに対して嫌気が差していたもの、必要としていなかった者、各々に運命のΩが現れた。
もう目の前にいる。